桜の名所、奈良県吉野。
古来より聖地とされていたその場所に、修験道を信仰する山伏の総本山「金峯山寺(きんぷせんじ)」があります。
もう、漢字からして不思議な読みのお寺ですが、ご本尊は蔵王権現(ざおうごんげん)。というこれまた不思議な名前の仏様がいらっしゃいます。しかもそのご本尊、日本最大の秘仏。
今回は、とっても不思議のつまった金峯山寺をご紹介していきます。
金峯山寺の基本情報
金峯山寺
住所:奈良県吉野郡吉野町吉野山2498
電話:0746-32-8371
拝観時間:蔵王堂 8時30分~16時30分
拝観料:境内自由。蔵王堂は800円(子供料金あり)また、ご本尊の特別開帳時は別途。
アクセス:近鉄吉野駅からロープウェイで3分。吉野山駅下車徒歩10分。
駐車場:なし
金峯山寺の駐車場情報
金峯山寺には専用駐車場がありません。
周辺に有料の観光駐車場が数件あります。一番大きいのが「吉野山観光駐車場」こちらの駐車場からは、金峯山寺まで歩いて20分程度です。こちらは通年駐車可能で大きいので、すぐにわかると思います。
また、「吉野山観光駐車場」を越えてからも数件小さい民営の駐車場がちらほらあります。混雑していない時期や時間帯なら停められると思います。金額は2000円~1000円程度。「吉野山観光駐車場」を越えてから金峯山寺までの山道は狭いので注意をして通行してください。
注意が必要なのが、桜の時期。(3月後半から5月のゴールデンウィークごろまで)このあたりは桜を目当ての観光客が押し寄せる時期なので交通規制をしています。車が入れない道路もあります。
「吉野山観光駐車場」でさえ、朝の8時以降なら混雑するほどです。
桜の時期はマイカーをさけて、電車で行くことをおすすめします。
明日から使える金峯山寺のお話。
- ほら貝を吹く山伏でおなじみの修験道の総本山(金峯山修験本宗の総本山)
- 日本の山岳信仰である修験道の開祖である、役行者(えんのぎょうじゃ)が開いたとされる。
- ちなみに、役行者は飛鳥時代に活躍した呪術者(!)らしい。
- 現在では「金峯山寺」といえば、このお寺の事をさしているが、昔の「金峯山寺」は奈良県の吉野山全体に広がる寺社・霊場の総称だった。めちゃスケールが大きい。
- なので、本堂もこれまたスケールが大きい。(何と大仏殿に次ぐ大きさといわれる。)
- 天平の頃(729~749年)の建築だが、火災などで焼失して現在の建物は戦国時代(1592年)に再建されたもの。
- 本堂は国宝に指定。
- また、役行者が蔵王権現の姿を桜の木に彫刻したという言い伝えから、吉野山では、山桜をご神木として保護している。
- また、桜の献木も盛んにおこなわれた為に、吉野は桜の名所となっている。
- 吉野名物の桜の木も役行者と深く関わっていてちょっと驚く。
- ちなみに、金峯山は修験道の中心的な道場として、現在でも山伏の厳しい修業が行われている。
- そんな金峯山寺を含む「紀伊山地の霊場と表参道」は、その文化的景観の価値が認められて2004年に、「ユネスコ世界文化遺産」に登録されている。
金峯山寺のある奈良県吉野。この「吉野」という名も由来があります。
「野」とは山と里の間にある、神さまと人間が交わる場所の意味。
「吉」とは文字通り吉=良いという意味。
「吉野」とは、吉兆に巡り合う、神様と人間の交わる良い場所。という意味となり、古来より霊験あらたかな場所として信仰されています。
良き野(吉野)いい名前ですね。
憤怒の顔で慈悲の象徴!蔵王権現
- 金峯山寺のご本尊は三体の蔵王権現。
- 普段は秘仏なので厨子の扉は閉じられていてそのお姿を見る事はできない。
- 正式名は「金剛蔵王権現」(ざおうごんげん)
- 聞きなれない名前に、え?菩薩?明王?それとも天部!?とパニくるなかれ。
- じつは蔵王権現はインドに起源をもたない、日本独自の修験道の仏様。
- 三体それぞれが、釈迦如来・千手観音・弥勒菩薩(過去・現在・未来)を表していて、三世に渡って私たちを救済してくださるために出現した時の姿を現す。
- 7世紀、この地で修業を行った役行者(えんのぎょうじゃ)が祈りを通じて出現させたといわれる。
- 製作は江戸時代
- 髪を逆立てた憤怒相(怒りの顔)で、右手に煩悩を撃退する武器である三鈷杵(さんこしょ)をもち、左手は刀印(刀を模倣した指の形)を結んでいて、魔を踏み砕くために左足を蹴り上げている。
- どこからどう見ても、心の魔や煩悩を撃退するためのバリバリの戦闘態勢。
- それなのに、その青い肌(青黒というらしい)は、仏さまの大いなる慈悲を表すというのだから、もうそのお姿にひれ伏すしかない。
- ちなみに、蔵王権現の「権現」とは「権(仮に)現れる」という意味。
- そして「蔵」という漢字には「全てを包みこんでくれるもの」という意味もある。
- 左から5.92メートル・7.28メートル.6.15メートルと、三体ともかなり大きい。
- 日本最大の秘仏ともいわれていて、
これまた、え?厨子なの?と言いたくなるような巨大な厨子の中に祀られている。 - 秘仏のため、通常は厨子の扉は閉じられていて、御開帳時期は不定。
- しかし現在、仁王門の修理勧進のために毎年一定期間公開されている。(こんなチャンスはないので、ぜひ訪れてほしい。)
役行者と蔵王権現
修験道を開いたとされる役行者(えんのぎょうじゃ)が1000日の修行の果てに祈りを通じて出現させたという蔵王権現さま。
役行者のねがいは、お釈迦様が亡くなったあとの悪い時代に生きる人々を一人残らず救うというものでした。
そんな役行者の願いを聞き入れて現れた「蔵王権現」様。
釈迦如来・観音菩薩・弥勒菩薩の三尊の仏様が𠮟りつけてでも人々を導いて、慈悲の心で包んで助けてやろう。と仮の姿(権現)で現れた姿です。
優しいだけが愛じゃない。情報が溢れて、人間の心が迷いやすい現代には、強く厳しく導いてくれる蔵王権現のような仏様がピッタリなのかもしれません。
権現(=権化)・・・仏が人々を救済する為にこの世に仮の姿で現れること。または、その姿そのものの事。
現在修復中の仁王門(2021年現在)
本堂(蔵王堂)の北側にある二階建ての大きな門が仁王門です。
吉野駅から金峯山寺に向かうと一番初めに私たちを出迎えてくれるこの門は、2021年現在修復中。
いつもは門には仁王像が安置されていますが、仁王像修理と、仁王門修復の為に2021年現在「奈良国立博物館」に仮住まい中になっています。
仁王門修理完了までは、金峯山寺の仁王様は、奈良国立博物館の玄関を護っていらっしゃいます。
木造金剛力士像(重要文化財)
- 高さ5.1メートルもあり、東大寺南大門の仁王像に次いで二番目に大きい仁王像となっている。
- 南北朝時代の1338年製作。
- 巨象あるあるとして、この仁王像も写真で真横から見るよりも、下から仰ぎ見た時が一番迫力があってバランスがよく見える。
周辺観光など
ロープウェイで吉野山駅に降り立ってから金峯山寺に向かう道筋は参拝道のようになっていて、色々なお店が軒を連ねています。気になるお店を覗いたりしながら参拝するのも、金峯山寺の楽しみ方の1つ。
こちらは老舗の和菓子屋さんで、草餅が有名。添加物をいっさい使用していないという草餅は良い香りがして何個も食べれてしまいます。(賞味期限は当日だったような・・・)
また、桜の季節には桜餅や色味の美しい桜羊羹。子供の日にはかしわ餅など、季節に合わせた和菓子も販売されています。
夏の暑い時期は、葛アイスなんてどうでしょうか?とってもオススメです。
金峯山寺まとめ
金峯山寺いかがだったでしょうか。
不思議な金峯山寺の由来。最大の秘仏である、三体の仏さまの事が分かれば、吉野という地を見る目が少し変わってきませんか?
吉野に桜を見に行った時は、この由来をほんの少し思い出すと桜を二倍楽しめるかもしれませんね。