お寺

薬師寺をゆるっと楽しもう

本日ご紹介するのは、奈良県西の京にある薬師寺です。

近鉄西ノ京駅を出てすぐ。奈良の有名なお寺にしては電車で行きやすいお寺。2008年には、平城遷都1300年記念事業として東京で開催された「国宝 薬師寺展」が大盛況だったという魅力あふれるお寺です。

薬師寺ざっくり解説

  • 興福寺と並ぶ法相宗の大本山
  • 天武天皇が妻(後の持統天皇)の病気平癒を祈願して建て始めたが、先に自分が死んじゃってしまい、後を引き継いで持統天皇が藤原京に創建
  • 710年の平城京への遷都を受け、薬師寺も現在の西ノ京に移った
  • 藤原京にあった薬師寺は区別の為に「元薬師寺」と呼ばれる(現在元薬師寺には建物はなく史跡のみが残っています)
  • ちなみに奈良市内にある新薬師寺との関連は特にない
  • 金堂(本尊がある)を中央に配しその東西に二基の塔を置くという伽藍配置
  • その中でも東塔は奈良時代に建てられたものがそのまま残っているという超貴重な塔。(もちろん国宝) ※現在修理中
  • 写経してそれを寺院に納めるお写経勧進が有名
  • 平山郁夫さんが三十年かけて、しかも無償で描いた「大唐西域壁画」があるので要チェック
  • 拝観料は800円(玄奘三蔵院伽藍公開時は1100円)

拝観料を払って境内に入ると目をひくのは、やっぱり東塔と西塔の

The Two Towers!!

特に東塔は、日本美術の救世主である、あのフェノロサが「凍れる音楽」と絶賛したシロモノ。2020年現在は史上初の全面解体修理の真っただ中。2021年完成予定が待ち遠しいです。

解体修理前の東塔(2009年撮影)

「凍れる音楽」を感じられるかは置いといて、工事の始まる前にお邪魔した薬師寺での東塔と西塔と並び立つ様子は迫力満点で美しいバランスでした。

ちなみに東塔の頂部には「水煙」があります。 仏塔の最上部に取り付ける相輪の一部で火炎をかたどっていて、「火事になりませんように!」と願いが込められてます。1300年以上効果抜群。

(西塔が火災にあった事はこの際忘れておきます。)

東西の塔の建築美を味わいつつ、真正面に進むとご本尊のある金堂に入れます。金堂には薬師寺ご本尊の薬師三尊像がいらっしゃいます。

外からのチラリズム

薬師三尊の偏った解説

  • 本尊 薬師如来(国宝)白鳳時代(奈良時代のちょっと前)建立
  • 向かって右に日光菩薩(国宝)・左に月光菩薩(国宝)
  • ゴレンジャーよろしく三尊で「一つ」の国宝認定。まさに三位一体。
  • 中国の作風も受け継ぎつつ、日本独自のものも取り入れた飛鳥時代の傑作仏像。(今風に言えば和洋折衷の仏像といったところ。)
  • 薬師如来もさることながら、脇を固める日光・月光菩薩の腰のひねり方が秀逸でファンが多い。
  • 素材が木ではなく金属(銅製)なので金堂が焼失したさいも無事だった。
  • 薬師如来は身体と心の病気を癒してくれる如来様。阿弥陀如来があの世の象徴であるのに対して、薬師如来は“生 ”の象徴とされている。
  • 手を合わせる時は南無阿弥陀仏ではなく「南無薬師瑠璃光如来(なむやくしるりこうにょらい)」と唱えましょう(舌噛みそう!)

ご本尊の薬師如来様は東方にあるといわれている浄瑠璃世界のトップであります。(ちなみに阿弥陀如来様は西方極楽浄土のトップ)瑠璃というのはラピスラズリのような青色の宝石のことです。私は瑠璃のような素晴らしい世界っていう理解をしています。

薬師如来は「薬」という名前の通り、人びとの病気や災難を除き、健康と幸福を与えてくださる仏様。

阿弥陀如来が死んだ後の「あの世」で救ってくださるのに対して、「生きる」ことの苦しみ(病気や災害など)から救済してくださる仏様。コロナ禍を生きる現代にピッタリな如来様だといえます。

薬師如来の多くは「薬師如来です!」と分かりやすいように左手に薬壺をもっている事が多いのですが、仏像の黎明期であるこちらの薬師如来は薬壺を持ってはいません。

ちなみに薬師如来に、死んだ後の極楽行きを願う「南無阿弥陀仏」を唱えると、「え?病気治して長生きしたいの?極楽行きたいの??どっち?」と如来様が混乱するのでやめましょう(笑)

平山郁夫画伯

薬師寺の境内、東塔や西塔、金堂などの「白鳳伽藍」の広がるゾーンから北側、道路を渡った先に、玄奘三蔵院伽藍や写経道場などのあるゾーンがあります。

どうして薬師寺に、あの「西遊記」でおなじみの玄奘三蔵の伽藍があるのかな?と思っていたのですが、法相宗の大本山である薬師寺。その法相宗の開祖が慈恩大師基。そして、その師匠がかの有名な玄奘三蔵。薬師寺は玄奘三蔵と深くつながっていました。

その玄奘三蔵院伽藍には、平山郁夫画伯の描いた「大唐西域壁画」があり、年に数回期間限定公開されています。(壁画内は撮影一切禁止)

私は平山郁夫さんの優しい目線で描かれるシルクロードや不思議な色合いがとても好きで数年に一度はこの「大唐西域壁画」を見に行きます。壁画には玄奘三蔵(三蔵法師)が中国からインドへと旅して目にしたであろう景色が描かれており、切り取られた風景全てが美しく、旅した気分に浸れます。