お寺

法隆寺・これだけは見ておいてほしい仏像たちをご紹介

奈良斑鳩の地にある世界遺産法隆寺。

聖徳太子ゆかりの寺として名高いこのお寺には国宝・重要文化財に指定された名だたる仏教美術が盛りだくさん!!
今回は法隆寺って建物も仏像もめちゃくちゃ沢山ありすぎてどれが何だか分からない。という方の為に、これは見ておいてほしい!!と個人的に思うものをピックアップしてご紹介していきたいと思います。

建物で覚える法隆寺の仏像

法隆寺には広い境内に建物がたくさん建っていてそれぞれに仏像が安置されています。

建物とセットで覚えると、お寺を散策する時に目的の仏像の場所にすぐに行けて便利です。「金堂」「大宝蔵院」「夢殿」はぜひともおさえておきましょう。

金堂の仏像

飛鳥時代の建築様式を今に伝える金堂。その内部には、飛鳥時代から鎌倉時代に至る各時代の仏像が大終結。
ちなみに、同じ一部屋の空間が、柱と天蓋によって中の間・東の間・西の間とそれぞれ区分けされていて、本尊もそれぞれ違います。

何とも濃すぎる空間ですね。

釈迦三尊像(国宝)

  • 教科書で誰もが一度は目にした事のあるであろう、飛鳥時代の仏像の代表。日本仏教彫刻史のスタートを飾る仏様。
  • 623年製作。銅製。
  • 金堂・中の間の本尊
  • 聖徳太子の等身像と言われる。
  • 日本仏師の祖といわれる止利仏師(とりぶっし)の作品。(飛鳥大仏も止利仏師の作品)
  • 「しゃかさんぞんぞう」ってめっちゃ舌噛むよね。という話は置いておいて、三尊像。というのは、真ん中の「お釈迦様(釈迦如来)」をはさんで左右に「文殊菩薩」と「普賢菩薩」を置いた仏像の配置のこと。
  • 三体の尊い像なので「三尊像」と呼ぶ。
  • ちなみに、法隆寺のお釈迦様が従えているのは「薬王菩薩」と「薬上菩薩」らしい。
  • 杏仁形(アーモンド形)の目やアルカイックスマイルを浮かべた口元。などが、飛鳥時代の仏の特徴がものすごく分かりやすい。
  • アルカイックとは古典的。みたいな意味。
  • また、裳懸(もかけ・・・台から下に垂れている衣装の裾の部分)の曲線が模様のようになっている。
  • わきの菩薩もふくめた計算された左右対称性もチェックポイント。
  • 人間の肉体を感じさせない、抽象的・概念的な造形が、仏教の神秘性を表現している。
  • 釈迦三尊像の両脇には、毘沙門天吉祥天の像があり、夫婦といわれる二体の配置に、ちょっとホッコリする。

四天王立像 (国宝)

  • 四天王像金堂の四隅におかれて四方を護っている。
  • 7世紀半ばの作品。木製。
  • 現存する四天王像の中で日本最古のもの。
  • 後の時代の動きのある四天王像と比べて静かに直立する。
  • また、手に持っているものも武器ではなく筆や塔などとおしとやか。
  • 踏まれているのは、もちろん邪鬼だが、これもまた、しつけが行き届いているかのように静かに踏まれている。
  • 顔立ちや、装飾品の文様などが夢殿の「救世観音」と似通っていて面白い。

夢殿の仏像

金堂から東に位置する東院伽藍の中心、「夢殿」。八角形の建物で、聖徳太子の宮殿跡といわれる場所。奈良時代に聖徳太子が大好きな僧侶によって建立された建物の中には有名な救世観音が安置されている。

救世観音 (国宝)

  • ご存知、夢殿のご本尊
  • 樟の一本作りで、7世紀前半の作品。
  • 聖徳太子のその姿をうつした像だと伝わる。
  • 13世紀ごろから、住職さえも見れない法隆寺の「絶対秘仏」とされ、夢殿に封印されていた。
  • 「絶対秘仏」とか「封印」とかいうワードにちょっとドキドキする人も多いという(多分)
  • 明治時代にフェノロサと岡倉天心が文化財調査のためにその封印を解いたのは有名な話。
  • 布でぐるぐる巻きにされ、長い間人目に触れていなかったため、保存状態がとても良い。
  • 正面鑑賞用とか言われるほどの美しい左右対称性をもつ。
  • 毎年春と秋の特別拝観中なら誰でも拝観可能なので、かつての絶対秘仏をぜひとも鑑賞しに行ってほしい。
  • ちなみに観音菩薩は「悟りを目指して修行中」の仏様。というお立場なのだが、たまに、如来(悟りを開いた仏様)」になることが定まっている菩薩様。というのも存在する。
  • その「如来確定」の菩薩様には「如来の相」なるものがあり、身体的特徴がある。
  • そして、この救世観音にも「如来の相」が示されている。
  • 「光背」「額の白毫」「三道(首元の3本のシワ)」「蓮台(蓮の花びらの台座)に乗っている」 など、如来特有の身体の特徴や、装備品などの表現が「如来の相」と呼ばれる。
  • 救世観音様を拝観するときは、それらをチェックして「はい、救世観音様、如来確定。」なんて思うのも楽しいかもしれない。

大宝蔵院の仏像など

大宝蔵院は、近代的な設備整った宝物館。世界的に有名な「百済観音像」を安置する為に、平成10年に新築された。百済観音堂を中心とする大宝蔵院の中では法隆寺の仏教芸術があますことなく堪能できる。

百済観音 (国宝)

  • 平成10年に完成の百済観音堂のご本尊。
  • 樟で作られた木造の仏像で7世紀、百済の仏師が作った仏像とされる。
  • 高さ210センチという長身の像で、長い手足にほぼ八頭身という完璧なプロポーション。
  • 実は古来より「虚空蔵観音」と呼ばれていた。
  • 「百済観音」と呼ばれるようになったのは明治頃からなので、意外に新しい名称だったりする。
  • ちなみに、左手に水瓶を持っていることから、酒買観音と呼ばれて親しまれていたこともあるらしくて面白い。
  • 飛鳥時代の仏像として救世観音と並び称されるが、作風は対照的
  • 救世観音に比べて眼や口が小さくスマイルも控えめな印象。
  • ほっそりとした体には丸みがあり、やわらかな質感がある。
  • 正面を重視した飛鳥仏の中で、カーブを描いた衣のすそなどが軽快でサイドからの視線も意識して造られている。
  • 実際、大宝蔵院の中では、サイドからもじっくり鑑賞できるようになっているので、前後左右にじっくりと眺めてほしい。
  • 1997年にルーブル美術館にてレンタル展示されるため、海を渡ったこともある。(交換留学みたいな感じで、日本はドラクロワの「民衆を導く女神」をレンタルしてもらった。)

観音菩薩立像(夢違観音) (国宝)

  • 悪い夢を良い夢に変えてくれるという、伝承のあるありがたい観音様。
  • 銅製で奈良時代初期のもの。
  • 高さが86.9センチと、仏像としては小ぶり。
  • 清楚な姿だが、肉付きや衣の表現などのバランスなどが美しく、飛鳥から奈良時代に彫刻が進化していったことが伺える。
  • 悪夢を吉夢にかえてくださるだけあって、お顔もとても優し気。
  • 小ぶり&銅製=持ち運びやすいということで、日本や世界各地への出張がおおい。
  • 各地で法隆寺のすばらしさを広めるのに一役かってきた仏像。
  • 法隆寺の営業部長といえるかもしれない。

玉虫厨子と橘夫人厨子 (ともに国宝)

  • 厨子とは、仏像・仏舎利・教典・位牌などを中に安置する仏具の一種(ウィキペディアより)
  • 厨子の建築様式が全く「金堂」や「五重塔」と同じなので、いわば飛鳥建築のミニチュアともいえる。
  • どちらも、最初期の仏教御美術における、工芸・彫刻・絵画の総合的作品として価値が高い。
  • 「玉虫厨子(たまむしのずし)」は四周の透かし金具の下に、もとは玉虫(キラキラの虫)の羽が輝いていたのでその名で呼ばれる。
  • 現在は玉虫の羽は大部分が失われてしまっている。
  • 平成16年(2004年)に玉虫厨子を現代に再現するプロジェクトが立ち上がり、4年の歳月を経て完成された復刻版は現在法隆寺に奉納されている。
  • ちなみに、「平成の玉虫厨子」完成までを追った長編ドキュメンタリー映画も制作されている。(「蘇る玉虫厨子」監督:乾 弘明)
  • 一方の「橘夫人厨子」。橘夫人って誰よ?と皆さんお思いだろうが、光明皇后の母である三千代の念持仏と伝えられている。
  • 念持仏とは日常礼拝用の仏像。
  • 中に納められている阿弥陀三尊像は飛鳥仏の象徴であるアルカイックスマイルを浮かべているが、衣の表現や体の丸みなどが奈良時代の特徴が出てきていて、飛鳥から奈良への移行形式がうかがい知れる。

法隆寺の仏像まとめ

法隆寺の仏像について、何となくお分かりいただけたでしょうか。

今回は代表的な飛鳥時代の仏像をご紹介しましたが、法隆寺には、まだまだ国宝・重要文化財がたくさんあります。ありすぎて紹介できない!!というのが本音です。飛鳥仏だけでなく、奈良時代~平安時代~鎌倉時代と各時代の仏像もみることができます。時代の変遷を一つのお寺で感じる事のできる法隆寺。皆さんも是非訪れてみてくださいね。

法隆寺DATA


奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1-1

JR法隆寺駅からバスで8分「法隆寺門」下車すぐ。またはJR法隆寺から徒歩25軍。

駐車場なし。ただし、近隣に法隆寺参拝者のための駐車場は多数あり。(どこも600円~400円程度)

拝観時間:8時~17時(11月~2月は 8時~16時30分)