日本人のご飯のお供。漬物。
ぬか漬けや、べったら漬け、野沢菜漬けなど、
あと一品欲しい!!というときに食卓で大活躍してくれます。
そもそも漬物とは、野菜類や魚介類などを、食塩・酒粕・酢・米ぬかなどに漬け込んで、一定の期間置いた後に取り出して食べる食品です。
そして、漬物には味が染みたらすぐに食べるものと、熟成させるものがあります。
熟成させるものには、発酵を伴っているものが多くあり、ぬか漬けやこうじ漬けがおなじみです。
つまりは、漬物は立派な発酵食品というわけです。
今回は、手軽に取り入れられる発酵食品「漬物」の種類や、発酵食としての効能、面白い食べ方などをご紹介していきます。
色んな発酵漬物 紹介
漬物は、野菜などを保管する知恵として古くからつくられてきました。
日本のみならず世界にもさまざまな種類の漬物があります。
そこで、代表的な乳酸菌発酵をともなう漬物の種類と特徴をまとめてみました。
ぬか漬け | 米ぬかに塩と水を加えて、乳酸発酵させた「ぬか床」で野菜を漬けたもの。 乳酸菌を増やすためには、毎日かき混ぜるなどの手入れが必要。 |
すぐき漬け | すぐき菜という京都の特産野菜の根と葉を塩漬けして乳酸発酵させた漬物。 実は、乳酸菌飲料のラブレはすぐき漬けについた乳酸菌をもとに作られている。 |
ザーサイ漬け | からし菜の中まで、茎が肥大したザーサイという中国野菜を干して塩漬けにし、 一度塩抜きをしてからとうがらしや香辛料で再度乳酸発酵漬けにしたもの。 ちなみに、市販品は油いためしてある。 |
べったら漬け | 塩で下漬けした大根を砂糖や米、米麹で漬ける。 名前の由来は、麹がでんぷん質を分解してベタベタするから。 歯触りと甘みを楽しむもので、保存性はない。 |
野沢菜漬け | 長野県の名産である野沢菜を塩漬けにして、長期間乳酸発酵させた伝統的な漬物。 発酵が進むにつれて、飴色の古漬けになる。 市販品には醤油で色付けしたものもあるので選ぶ時は注意。 |
キムチ漬け | 赤トウガラシ、にんにく、発酵させた魚介類などを混ぜて野菜を漬け込み、 乳酸発酵させる朝鮮半島の伝統的な漬物。白菜やきゅうり、大根などが有名。 発酵が増すと、酸味も増す。 |
ザワークラウト | 塩もみした千切りキャベツをローリエやジュニパーベリー・キャラウェイなどの 香りの強いスパイス類とともに漬けて乳酸発酵させる。 煮込み料理などにも人気。 |
漬物と菌の働き。
発酵を伴うタイプの漬物は、どんな菌たちが働いているのでしょうか。
ぬか漬けなどでよく働いているのが乳酸菌。
乳酸菌には様々な種類がありますが、漬物の場合は、植物の成分を主に分解するタイプの乳酸菌です。
植物性乳酸菌
漬物で働いてくれている乳酸菌は、植物の成分を分解するが得意な菌です。
「植物性乳酸菌」ともよばれるこのタイプの乳酸菌は、一般的に「動物性乳酸菌」よりも過酷な環境に強いと言われています。
牛乳などの栄養たっぷりの食材で繁殖する菌よりも、キュウリなどのあまり栄養のない食材の中でも生きていける菌の方が、過酷な環境に強いという理屈です。
温室育ちの花よりも、屋外に生えている花の方が強いというイメージでしょうか。
そんな植物性乳酸菌は、食べた時に胃酸で死滅せずに腸に届く確率が高いと考えられています。
乳酸菌とは、糖を分解して乳酸をつくる菌の総称の事で、
乳酸球菌や乳酸桿菌など数多くの種類が存在しています。
「乳酸」は「酸」とつく名前の通り、増えると食品の酸性度が上がります。
(つまり酸っぱくなる。)
また、「乳」という文字が付いているので、乳製品に入っているの?
と思われがちですが、実は乳酸菌はどこにでもいる菌。
自然の状態で野菜の表面などにもついています。
ぬか床を毎日かき混ぜる理由とは?
ぬか漬けを自分で作ってみようとしたときに、
「毎日かきまぜましょう」と書いてあるのをよく見かけませんか?
これは、ぬか床に住んでいる菌たちの性質に関係しています。
ぬか床にはさまざまな菌が住み着いていて、日々入れ替わっています。
ぬか床は毎日が戦国時代!?
ぬか床に漬物を仕込んだ後は、いろんな菌たちが入り混じっている状態です。
小さなぬか床の中に戦国時代が訪れたように、菌たちは互いに熾烈な縄張り争いをくりひろげます。
そして、時間の経過とともに、乳酸菌が増え始めると、漬物の酸性度があがっていきます。
酸性度が上がると、多くの雑菌は減少し、そのかわりに別の種類の乳酸菌や酵母が幅をきかせるようになっていきます。
昨日と今日の味が違う事があるのは、菌たちの攻防の証。
乳酸菌や、酵母などのおかげで、日々変わっていく味わいを感じるのもぬか漬けの愉しみなのかもしれません。
ぬか漬けをつくる場合は、食材の風味をそこねない琺瑯容器がおすすめです!
好気性菌と嫌気性菌
そんな菌たちですが、
それぞれ、「好気性」と「嫌気性」という分類で分けられています。
ざっくりいうと、酸素(気体)が好きな菌=好気性。酸素(気体)が嫌いな菌=嫌気性。という分類です。
分類を分かりやすくまとめてみました。(ざっくりのイメージはこんな感じ)
ぬか床をかき混ぜる作業は、空気を好む菌、好まない菌を入れ替える作業のようなもの。
一方定期に酸素が好きな菌や、嫌いな菌が増えたりせずに、菌のほどよいバランスが保たれるというわけです。
小さなぬか床の中にある、独自の菌たちの世界を守るメンテナンスなんですね。
漬物の栄養効果 3選
漬物は、そもそもが野菜を発酵しているので、体によい効果がたくさんあります。
主なものだけで3つ!
- 乳酸菌が腸内のバランスをアップ
- 食物繊維とビタミンが豊富
- 注目の成分GABA
くわしくみていきましょう。
乳酸菌で腸内のバランスアップ
漬物に含まれる「植物性乳酸菌」は、過酷な環境に強いと言われています。
その為、食べたときに胃酸で死滅せずに腸にとどく確率が高いと考えられます。
また、漬物の植物性乳酸菌は、私たち日本人の腸内環境の改善に効果的です。
腸内細菌が腸内の菌のバランスを整えることにより、正常な便通を促してくれる。
免疫機能を高めてくれる。などの効果が期待できます。
食物繊維とビタミンが豊富
漬物を語るうえで、野菜自身のもつ食物繊維やビタミンの話は欠かせません。
もともと漬物の材料である野菜には、食物繊維やビタミン類が多く含まれています。
それに加えて菌が活動する過程で、ビタミンB群の量がアップ!
ビタミンB群は「美容ビタミン」とも呼ばれるほど、お肌や髪の健康に欠かせないビタミン。
積極的にとりたいですね。
また、水分が抜けてかさが減る分、食物繊維の割合も多くなります。
食物繊維は、腸活には欠かせない栄養素!
便通改善に役立つだけではなく、腸の善玉菌の餌にもなります。
腸活について詳しくは「手軽に簡単。腸活をはじめてみよう!」の記事を参考にしてください。
注目の成分GABA
近年、注目の成分がγ-アミノ酸。別名GABA(ギャバ)
GABAが配合された食品も販売されているので名前を聞いたことのある方も多いと思います。
GABAは、アミノ酸の一種で、発芽玄米などに多く含まれる物質ですが、
漬物の中に含まれる乳酸菌にはGABAを生みだ力があります。
GABAには、血圧上昇抑制作用が認められています。
また、人間の脳内にも存在して、脳の興奮状態をしずめてリラックスさせる働きもあります。
そのため、緊張やストレスをやわらげたり、睡眠の質を上げたりする効果が期待されているというわけです。
ただし、GABAの効果は長くは続きません。
安眠を期待する場合は、夕食に漬物を取ることをオススメします。
GABAを多く含むのは、ぬか漬け、しば漬け、すぐき漬けなどの微生物の力を利用した
発酵漬物です。積極的にとっていきましょう。
キムチ・ザワークラウトなどにも多く含まれています。
最近では漬物をあまり食べない人が増えているようです。けれども、漬物には野菜の本来持っているパワーに加えて菌の力が加わっています。
日本に古来より受け継がれている漬物のよさを見直してみませんか?
漬物の塩分について
ご紹介してきた通り、漬物は古くから伝わる日本人には欠かせない発酵食品です。
しかしデメリットもあります。
それは塩分が高い事。
漬物の多くは塩分2~5パセーントから多いもので10パセーントをこえるものもあります。
健康にいい成分が含まれているとはいえ、塩分のとりすぎは高血圧の原因に・・・
どれくらいの漬物にどれくらいの塩分が入っているのか何となく知っておけばコントロールしやすいですね。
代表的な漬物の塩分
しば漬け・・・20g(写真くらいの量)
ぬか漬け・・・20g
べったら漬け・・・40g(厚切り3切れ)
野沢菜漬け・・・40g(中株半分程度)
たくわん・・・40g(4切れ程度)
上記は大体の目安です。濃い味が好きな方や、塩分を控えないといけない方は参考にしてくださいね。
塩分が高い=塩見が強すぎる漬物は、水に浸して塩分を抜いてからだと、美味しく食べることができます。
料理にも使える!?漬物アレンジご紹介
漬物はそのまま食べても十分美味しいですが、たまにはアレンジ料理も面白いです。
今回は混ぜるだけのソースをご紹介!
加熱をしないので、菌のパワーも丸ごと頂けます!!
混ぜるだけでできる!漬物タルタルソース☆
材料:好きな漬物(歯ごたえのある漬物が美味しい)
マヨネーズ
作り方:
① 漬物を細かく刻む。
② 容器にマヨネーズを入れて、そこに①を入れて混ぜる。
色がきれいになるので写真では、しば漬けを使用していますが、お好きな漬物でOK。
作ったタルタルは、鶏肉や魚のフライにとっても良く合います!
ぜひ試してみてくださいね。
まとめ
発酵食品としての漬物。いかがだったでしょうか。
漬物は、美味しいだけでなく、さまざまな効能をもった立派な発酵食品です。
塩分だけには気を付けてぜひ毎日の食卓の彩りにくわえてみてくださいね。